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ビットコインと金。これまでの変遷と価格変動の相関関係について

ビットコインは、 デジタルゴールドとも呼ばれ、金と比較されることも少なくありません。

ビットコインはデジタルゴールドなのか? 〜通貨よりもゴールド(金)に近いと言われる理由〜 の記事では、ビットコインが金に似ていると言われる理由について解説しましたが、価格面での相関性があるのかどうかは気になるところではないでしょうか?

そこで今回は、株式会社クリプタクトの斎藤様に「ビットコインと金。これまでの変遷と価格変動の相関関係について」を寄稿いただきました。

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皆さん、こんにちは。株式会社クリプタクトの斎藤です。

突然ですが、私がビットコインを多少なりとも真面目に調べたのは 2012 年のころでした。

当時はユーロ危機、ギリシャ危機の最中で、ギリシャがユーロから外れてドラクマが復活するんじゃないか?ドラクマなど持ちたくないから今のうちにビットコインを買おう、という動きがあったようで、「ギリシャ人やキプロス人がビットコインを購入している」というニュースが流れてきて初めてビットコインを多少なりとも調べてみようとなったのです。

といってもさわりだけ調べて、あまり本気で追いかけてはいなかったのですが、あれから 8 年ほどがたち、ビットコインを取り巻く環境もずいぶん変わったのだと思います。

少なくとも 2012 年当時はビットコインを金と比較するような話はほとんど聞かなかったと思いますし、ドラクマよりマシだから何でもいいから資産を移せるものとしてビットコインが捉えられていた程度で、私もそれ以上深く考えることはしばらくありませんでした。

その後、ビットコインは、価格、流動性、ボラティリティ、市場参加者、デジタル通貨としての可能性の議論などあらゆる方面で進化してきたと思います。

そこで今回は資産クラスとしての切り口からみた変遷について考察してみたいと思います。具体的には、価格、ボラティリティについて、金と比較しながらビットコインとの相関関係を調べてみました。

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図表 1 :ビットコイン価格( 2013 年 4 月 28 日を 100 とする)クリプタクト調べ


図表 1 はまずビットコイン価格です。 7 年前の価格を 100 として、どのような価格推移をしているかグラフ化しました。現在の価格は 8,000 弱、つまり 7 年前から 80 倍近くになったということで、わかりきっている話ですが改めてみるとすごい価格上昇ですね。
3 年前なら 160 倍をつけていました。

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図表 2:金先物価格(2013 年 4 月 28 日を 100 とする)クリプタクト調べ

一方で図表 2 は金価格です。同時期を振り返ると、 5 年ほどはあまり価格変動がありませんでしたが、直近 2 年で大きく買われ、 30% ほど価格上昇しています。当たり前ですが、ビットコインとは全く違う動きですね。

とはいえ、ビットコインと金はよく比較されたり、デジタルゴールドという形容でビットコインが表現されたりすることがあります。

金融危機以降バランスシートを拡大する中央銀行や、それに伴う無制限に見える通貨供給が行われる法定通貨に対して、ビットコインにせよ金にせよ、発行できる数量に上限がある、もしくはほぼ上限があるという意味で、価値が希薄化しない、あるいは保全される文脈で同列に語られたりします。

一方で、こういった話は、有事の際に金だけでなくビットコインも上がる局面においてこそ話題になり、最近では例えば株式市場の下落と共にビットコイン市況も連動することも多く、評価としては安定したものにはなっておりません。

そこで簡単ではありますが、ビットコインと金の価格変動の相関について調べてみました。


価格変動でみるビットコインと金の相関関係


下記、図表 3 はビットコインと金の過去 30 日間の価格変動について、その相関係数をグラフ化したものです。
相関係数は 1 に近づくと正の相関(同じ動きをする)、 -1 に近づくと負の相関(真逆の動きをする)となり、一般的に -0.2 ~ +0.2 の間はほとんど相関がないことを意味しています。
グラフをみると、過去 7 年に渡りほとんどの期間がこのほぼ無相関の期間となっています。 0.2 ~ 0.4 は多少相関があることを意味していますが、その期間もこうしてみるとあまりなかったり、金価格が大きく動いた直近 2 、3 年でみても相関のある期間が増えている印象もありません。

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図表 3:ビットコインと金の価格変動の相関 クリプタクト調べ

これだけみると、「ビットコインと金の相関はあまりない。」という結論で終わってしまいます。
こういった分析は一定程度恣意的にできてしまう面もあり、例えば期間を区切ったり、評価の仕方を変更することで相関がある、もしくは相関が増してきた、と言えるようなこともできるのですが、少し別の視点でもみてみましょう。

最近の肌感覚としては、ビットコインの値動きがかつてほど荒々しくない、と感じています。そこでビットコインの価格変動のボラティリティを調べてみました。

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図表 4 :ビットコインのボラティリティ  クリプタクト調べ

大まかなイメージでいうと、ボラティリティが 50% あれば 1 日に約 3% の値動きがある、というものになります。

こうしてみると、意外にも直近のボラティリティが低い、という傾向はあまりなく、 2017 年のバブル、 2018 年の暴落期に比べると落ち着いてきたくらいで、2015 年、 2016 年と比べれば、ボラティリティはむしろ高いともいえます。

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図表 5 :金のボラティリティ  クリプタクト調べ


参考までに図表 5 は金のボラティリティです。

一時的に上昇することはありますが、おおむね 10 ~ 20% 程度の範囲を行き来しており、こちらも過去とそんなに傾向に相違はありません。

結果的にボラティリティの比較においても、過去と比べて直近がビットコインと金で似通ってきている、という話もありませんでした。

この結果をみると「ビットコインと金が似ているというのは幻想であって、実際はほとんど関係してなさそう。安全資産としてビットコインを捉えるのは無理なのかも。」と思ったかもしれません。しかし、私にとっては、この無相関であること、金と連動していないことこそが資産としてみたときに価値があると考えています。

これはややポートフォリオ理論のような話にもなりますが、一般的に相関性の薄い資産クラスをポートフォリオとして保有していくことで、ポートフォリオ全体のリスクとリターンは効率的になっていきます。ビットコインについても、金と相関のある動きをするのではなく、金とも異なる動きをすることによって、金もビットコインも両方持つ意味が出てくるのです。

安全資産と呼べるかどうかは議論の分かれるところではありますが、投資という視点、ポートフォリオの観点で、様々な資産を保有するのと同時にビットコインも「相関がない」からこそ保有する価値が出てきます。これは実はかなり大きい話で、世の中の多くのポートフォリオマネージャーは、相関のない資産クラスを常に探しており、実はビットコインがそれにぴったりな条件を兼ね備えています。これが、金との連動を意識され、金と同様の動きをすると、ポートフォリオの観点でのビットコインの魅力は半減、あるいはそれ以下に下がってしまうのです。

こういうコラムとしては、「相関がある」方が色々な話ができたりもして、正直ネタに困らないところもあるのですが、実際のところビットコインの魅力という意味では、「相関がない」ことを示せることのほうが意義が大きいと私は感じております。


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