テクニカルマーケットレポート 2020年のビットコインの総括と来年の展望
ビットコイン価格は、2020 年 12 月 17 日に bitFlyer Lightning BTC/JPY で 2017 年 12 月につけた史上最高値を更新し 240 万円台に突入しました。
ビットコインは史上最高値を更新したこともあり、非常に良い相場環境が続いていますが、今後の先行きはどうなっていくのでしょうか。
今回は、「テクニカル指標の読み方・使い方」などの著者である山中 康司氏に、2020 年を振り返りながら、年末から年明けまで今後数ヶ月程度の値動きを分析いただきました。
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2020 年のビットコイン相場を振り返る
bitFlyer Lightning BTC/JPY チャート( 2020 年 1 月 1 日から 12 月 20 日まで)
年初の始値は 779,690 円、その後 2 月まではじり高の展開を辿りますが、 2 月から 3 月にかけて新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、主要な金融市場は一斉にリスクオフの動きとなりました。
ビットコインも例外ではなく、2 月高値は 1,150,408 円で年初から 5 割近い上昇を見せていたところから、3 月安値は 441,900 円と 6 割以上の下落となりました。
しかし、コロナショックによる景気後退を最小限に抑えるため、世界の主要中銀による大規模緩和や各国政府による財政出動により、金融市場には急速に安心感が戻ることとなります。
現在に至るまで実体経済は回復途上にあるものの、少なくとも金融市場は金融と財政に支えられ、リスク資産への資金シフトが今でも続いています。これが 2020 年の株高、そしてビットコイン高を招いた最大の理由です。
金融市場は米国株式市場を中心としてマネーゲームと言うひともいますが、資金市場ではゼロ金利で資金が調達できるのですから当然の動きと言えます。今年の資金市場の動きを見てはっきりしたことは、ビットコインもリスク資産のひとつとしての地位を確立したことです。つまりリスクオフの時には売られるものの、リスクオンであれば買われるという相関が確立したと言ってよいでしょう。
2019 年までのビットコインは、一部の市場参加者による需給のみで動いていたため、ビットコインをアセットクラスの一つとすることに対して懐疑的な見方もありました。
しかし、2020 年に入り多くの機関投資家がビットコインなどの暗号資産を運用対象としてファンドに組み入れるようになったことで、今ではアセットクラスとしての仲間入りを果たしたと考えられます。
こうした機関投資家の新たな動きで、暗号資産の価格が上昇しているところに、米決済大手ペイパルによる暗号資産サービスを開始するというニュースが上昇相場を確定的なものにしました。これにより、ビットコイン価格は 11 月に 2019 年 6 月の高値 1,496,427 円を上抜けることになりました。
ここからはテクニカルな買いも後押しし、12 月には一気に対ドルでの史上最高値更新、対円での史上最高値更新へと繋がりました。今後もある程度の押しは挟んでいくと思われますが 2021 年 1 ~ 3 月期には思った以上の水準に上がっている可能性もあります。
果たして次のターゲットはいくらなのか、テクニカルな観点から見ていきます。
2021年、ビットコインの次なるターゲットとは
ここではテクニカルな観点から次のターゲットとなり得る水準をいくつか見ていくこととしましょう。
既に史上最高値を付けていますので、値幅観測の手法としてはフィボナッチ・エクスパンションを使います。これは大きな上昇N波動を考え、安値から最初の高値までを第 1 波、最初の高値から押しが入る安値までを第 2 波、その安値から最初の高値を超えた時点で更なる上昇を考え、第 3 波の高値を計算するものです。
週足チャートをご覧ください。
長期的な値幅観測となりますので、ここでは 2018 年 12 月安値 354,350 円を起点の安値と考えます。
第 1 波は 2019 年 6 月高値 1,496,427 円までの上げ、その後の押しは 2020 年 3 月安値の 441,900 円でこれが第 2 波です。そしてこの第 2 波の安値(年初来安値)からの上げで、2019 年 6 月高値を超えた時点で第 3 波が始まったということになります。
フィボナッチ・エクスパンションの基本は第 1 波の上昇幅 1,142,077 円(= 1,496,427 円 - 354,350 円)を第 2 波の安値に加えて上げるのが基本です。そうすると、ターゲットは441,900 + 1,142,077 円となり 1,583,977 円と約 160 万円の水準がひとつのターゲットとなっていましたが、既に大きく抜けています。
その場合は安値に加える第 1 波の値幅に 161.8% を掛けたり、261.8% を掛けたりしてより高い水準のターゲットを算出します。すると以下のようになります。
441,900 円+(1,142,077 円×161.8%)=2,289,781 円
441,900 円+(1,142,077 円×261.8%)=3,431,858 円
この計算でも 161.8% エクスパンションの約 230 万円は既に上抜けていますが、2017 年高値にも近く短期的にはいったん調整が入りやすい水準でもあります。しかし、261.8%エクスパンションの約 340 万円にはかなり距離があります。そうした場合には、節目となる価格(50 万円刻み)である 250 万円、300 万円という水準を 340 万円に向かう途中の目安と考えることが一般的です。
そうなると、2020 年の年内高値の目途としては節目の 250 万円という水準を考えておくと良さそうです。そして更にその上の節目の 300 万円は 2021 年の 1 ~ 3 月期に見るのではないかと考えていますが、最終ターゲットでは無いにせよ、ここまで上がればいったん調整を考えるべきという 340 万円はいつ頃トライするのでしょうか。
フィボナッチ・エクスパンションは価格だけでなく時間にも適用することが可能です。価格のエクスパンションをプライス・エクスパンションと呼び、時間のエクスパンションをタイム・エクスパンションと呼びます。このタイム・エクスパンションを使って時期的なターゲットを考えてみます。
価格と同じように考えますが、安値と安値の間の時間を、その間の高値から延長した時期を見ることになります。価格が縦軸、時間が横軸で同じような考え方であることがわかると思います。起点の安値 2018 年 12 月から、押しの安値 2020 年 3 月安値までの経過時間を週足の本数で数えると 65 週の経過です。
65 週の 100%、127.2%(161.8% の平方根)、161.8%、261.8% の時間経過を 2019 年 6 月高値から延長してみましょう。
100%(65 週)経過 9 月 17 日週
~12 月 17 日週までで 78 週経過~
( bitFlyer LightChart の週表示は木曜)
127.2%(83 週)経過 1 月 21 日週
161.8%(105 週)経過 6 月 24 日週
価格面でプライス・エクスパンションが 261.8% で約 340 万円、時間面でタイム・エクスパンションの 161.8% の 6 月下旬と、価格と時間がフィボナッチ比で決まることを時間と価格の均衡と呼び、一目均衡表など他の手法でも方法は異なるものの、よく聞く言葉です。
2021 年は 6 月下旬頃に 340 万円を見る可能性が高いという見方を示して今年最後のテクニカルレポートとします。2021 年が皆様にとって素晴らしい一年となりますように。
山中 康司(やまなかやすじ)
1982 年アメリカ銀行入行、為替トレーディング業務に従事し 1989 年 VP、1993 年プロプライエタリー・マネージャーとして為替、債券、デリバティブ等の取引に携わる。1997 年日興証券に移り、1999 年日興信託銀行為替資金部次長として為替トレーティングとセールスを統括。2002 年金融コンサルティング会社アセンダントを設立、取締役。為替情報配信、セミナー講師、コンサルティングをつとめている。「テクニカル指標の読み方・使い方」等著書も多数。
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