テクニカルマーケットレポート ビットコインは小幅調整を挟みつつ上昇トレンドを継続か
ビットコインの価格は、2020 年 11 月に 180 万円を超えて年初来高値を更新するなど注目が集まっています。
2020 年もまもなく終わろうとしていますが、新型コロナの収束もいまだ見通せない中、今後の先行きはどうなるのでしょうか。
今回は、「テクニカル指標の読み方・使い方」などの著書である山中 康司氏に、直近 1 ヶ月の材料を振り返りながら、年末から年明けまで今後数ヶ月程度の値動きを分析いただきました。
ビットコインに好材料相次ぐ
この 1 ヶ月はビットコインにとっては好材料が相次ぎましたが、その中で上昇に弾みをつけた最大の材料は PayPal が仮想通貨(暗号資産)に対応したことです。10 月 21 日、米決済大手の PayPal が米国で暗号資産の取引サービスを開始することを公表しました。
対象となる暗号資産はビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコインの 4 種類、 PayPal アカウントで売買できるだけでなく、ユーザーは暗号資産で支払いが可能、受け取る店舗は換金された法定通貨(ドル、ユーロ、円等)を受け取ることが出来るようになるという発表でした。
PayPal と言えば世界でサービスを展開するオンライン決済最大手で、カード決済や銀行口座との連携もよくできており私もよく使いますが、あの PayPal が暗号資産を扱うというニュースにより、ビットコインを中心に急速に買いが集中しました。
10 月 21 日の bitFlyer Lightning BTC/JPY チャートを見ると、ビットコインは安値が 1,254,500 円、高値が 1,384,530 円と 130,030 円、率にして 10.4% ほどの上昇を見ることとなりました。この PayPal のニュースは暗号資産の利用される幅が広がるという期待感による上昇であったと言えます。
そして、もうひとつは 11 月 2 日から 9 日まで 1 週間続いた米国株式市場の急騰です。この期間は米国大統領選直前から大勢判明までの期間に該当します。
材料としては大統領選が一段落しどちらの候補が勝ったとしても追加経済対策などで景気てこ入れを行うという見方に加えて、12 月 FOMC において追加緩和の思惑が広がり、金融緩和=株高という教科書的な見方も補強する材料となりました。
そしてこの期間に出たもう一つの好材料はファイザーが行った新型コロナワクチンの治験で 90% 以上の効果が出たというニュースです。これは 11 月 9 日の欧州市場で最初にヘッドラインが流れましたが、NYダウは夜間取引の先物市場で急騰し、一時 1,600 ドルも上昇する動きとなりました。
株式市場の上昇が暗号資産にとって好材料なのかという点については、金利と株式のような相関にまでは至っていないものの、従来の金融資産の中でも代表的なリスク資産が株式であり、デジタル時代を代表するリスク資産が暗号資産であるという考え方です。
仮に保有しているビットコインが倍になれば、利益確定していなくても含み益がありますし、保有する資金に余裕があれば、コストの良いビットコインに買い増したビットコインのコストを加えても、平均コストで保有していることから暗号資産も素直にリスク資産であると考えてよいでしょう。
つまり、リスクオンというリスク資産に資金が動く流れはビットコインにとっても好材料であり、その他の要因が無ければ上昇につながるという見方が可能です。
ちなみに、bitFlyer Lightning BTC/JPY チャートによると、上記期間(11 月 2 日~ 9 日)のビットコインは 1,385,154円から 1,658,500円(高値は 11 月 6 日)と上昇していて、ここでは 21.7% の上昇です。11 月上旬の株価急騰はリスク資産への資金流入という効果によるものであったと言えます。
今年はビットコインの上昇率が目立つ
この 2 つのニュースを見ても 10 月下旬から 11 月上旬の株式市場や暗号資産市場の活況がわかりますし、日経平均株価も 29 年ぶりの高値と景気の良い記事が目立ちました。その中でもビットコインは上昇率という点で圧倒的です。比較のために NYダウとビットコインのコロナショック後の 2020 年最安値から 11 月高値までの動きを比較してみましょう。
単純に上昇率を比較すると今年大きく上昇した NYダウの 3 倍もビットコインは上昇してきたことがわかります。
また 11 月上旬の高値の付け方ではビットコインがまず高値をつけ、その後に NYダウが高値をつけていますが、米国株式市場でも NYダウよりもハイテク株を中心としたナスダックが先に上がるように、株と暗号資産との比較では最近は株より暗号資産が先行する動きがしばしば見られます。
先日お会いした投資家の方も、自分は暗号資産の取引はしないが、株式市場の先行指標としてビットコインの動きは参考にしているということをおっしゃっていました。リスク資産の 1 カテゴリとして暗号資産、特にビットコインが一般に認められた 1 年だったという言い方をしても過言ではないかと思います。
ビットコインの上昇目途
こうして金融市場全体の動きを見ていると、超緩和状態が続いている間はまだリスクオン相場が続きやすいと考えることは妥当です。そうだとすると、ビットコイン価格は、どこまで上がるのでしょうか。これは米国株と異なり、ビットコインには良いターゲットが存在しています。ここではテクニカルな観察を行うため次の週足チャートをご覧ください。
既に 2019 年高値 1,495,427 円を超えていますので、次のターゲットは 2017 年 12 月につけた史上最高値 2,312,100 円(オレンジの水平線)です。さすがに、まだ値幅はありますが、2019 年 6 月高値の 1,495,427 円(赤の水平線)を上抜けた段階で視野に入れ始めたと見てよいでしょう。
なお、調整が入る場合にはこの 2019 年 6 月高値に近い 150 万円前後、下げの限界点(最も下げる場合の目途)として 2020 年 8 月高値の 130 万円台前半という水準を考えておくと良さそうです。
この後 11 月中旬以降は、小幅の調整を挟みながらも年末から年始に向けてまずは大台の 200 万円、200 万円の大台を見ていったんは利食いによる押しも入ってきそうですが、そこから史上最高値を更新し 240 万円を見に行く流れが来年 1~ 3 月期にも来る可能性は高いのではないかと考えています。
山中 康司(やまなかやすじ)
1982 年アメリカ銀行入行、為替トレーディング業務に従事し 1989 年 VP、1993 年プロプライエタリー・マネージャーとして為替、債券、デリバティブ等の取引に携わる。1997 年日興証券に移り、1999 年日興信託銀行為替資金部次長として為替トレーティングとセールスを統括。2002 年金融コンサルティング会社アセンダントを設立、取締役。為替情報配信、セミナー講師、コンサルティングをつとめている。「テクニカル指標の読み方・使い方」等著書も多数。
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