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イーサリアム財団 宮口エグゼクティブディレクターに聞く!イーサリアムが持つ新たな可能性 ~イーサリアムはどう社会を変えるのか~〈後編〉

ーイーサリアムは現在どのような形で活用されていますか。

今は使えるアプリケーションがどんどん増えてきています。注目されているのはやはりファイナンス系ですね。分散型のレンディング(お金の貸し借り)サービスや分散型の仮想通貨取引所、イーサリアム財団がやっている助成金を非中央集権型で出す仕組みなどもあります。レンディングだと、ドル連動型ステーブルコイン「ダイ(DAI)」(イーサリアムを使って作られた仮想通貨)などを利用した仕組みもでき始めています。
最近は個人的に注目しているのがイーサリアム財団とユニセフのイノベーションチームが組んで進めているクリプトファンドです。途上国のブロックチェーンや AI などのスタートアップ支援をしています。
興味深いプロジェクトも多く、例えば処方箋を情報改竄できないようにしたり、コロナ禍で氾濫する情報の真偽を明らかにしたりする施策が進められています。国によっては流れている情報や仕組み、お金の流れが信用できないことが大きな問題となっています。例えば、世界経済フォーラムで発表された、コロンビア政府の入札プロセスの腐敗や不透明性をイーサリアムのプラットフォームでIDや資金の流れをはっきりさせることで解決する試みがあります。このように世界では政府などパブリックセクターでの利用例も出てきています。

ーイーサリアムを使ったレンディングサービスは、イーサリアムを使ってないサービスとはなにが違うのでしょうか。

イーサリアムを使用することでの違いは分散型であるということです。1 つの組織に頼らないということが透明性に繋がる上、ID の管理がしやすいです。ID の管理に関してはイーサリアムを用いた全てのアプリケーションに関連します。アメリカではクレジット情報に関して、アパートを借りるときもクレジットヒストリーの提出が必要であるくらい大切であるにもかかわらず、そこに蓄積されたクレジット情報が正しいかどうか、自分のクレジットなのに自分で確認できない上、誰がどうチェックしているのかも分かりません。
ひどい目に合わないと分からないですが、被害にあっている人は案外多いです。
ID の盗難や情報漏洩といった問題は、情報の管理をどこかの機関に頼っていることの弊害だと考えています。先日の Twitter のハッキング事件(バラク・オバマ前米大統領や、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏など数多くの Twitter アカウントが乗っ取られた事件)もそうですが、利用者個人がどんなにセキュリティを固めても、1 つの会社のシステムやサーバーがやられると無意味になってしまいます。その企業に悪意が無くても起きてしまうことなのです。既にコロナ禍で深刻化していますが、今後サイバーセキュリティはどんどん大きな問題になると考えています。


ー日本で暮らしていると怖い目にあうことは少ないですが、そういう目にあわないと分散型の価値が分かりにくいのではないかと思いました。

その通りですね。ブロックチェーンの大きな目的は信用を生み出すという点ですが、日本はお金を払わなくても信頼が成り立つ、世界でも珍しい国なので分散型にする価値が分かりにくいと思います。
例えば代金引換の仕組みもそうですね。商品をもらってからやっぱり払わない、という人が半数でもいたら会社が潰れてしまいます。このことから、アメリカでは代金引換は存在しません。これから世の中が変わっていくと一般の人もそういうことを考えなければいけない時代になっていきます。そういう部分で、ブロックチェーンに関する興味と教育の需要が増えています。


ー今、日本でイーサリアムが使われている事例はありますか。

日本発で実際にサービスが開始されているものといえば、ブレイブフロンティアやマイクリプトヒーローズ(マイクリ)、クリプトスペルズ、コントラクトサーヴァントなど、ゲームが多いようです。あと FiNANCiE という個人の成長に対して支援ができるアプリもありますね。
また、実証実験中や開発途中のアプリケーションもたくさんあり、イーサリアムを使った電子書籍事業(ガウディ、コミックスマート)、AI の機械学習モデルを管理するプラットフォーム(クーガー)、サプライチェーンの電子化・効率化(三井物産流通ホールディングス、NTTコミュニケーションズ)などが最近発表されています。

ゲームに関して日本は強いので、これからさらに分散型のゲームが出てきて注目されていくのではないかと思います。使いやすさの改善に関しても日本人の得意なところなので今後の日本勢の活躍に期待したいですね。

ーイーサリアムの今後についてお聞きしたいです。

例えば特に深刻な問題の多い途上国ですが、中央集権型の弊害を解決することで社会に大きな変化が起き、そういう大きな社会の変化に関わっていけるプロジェクトが既に出てきていますね。長期的には私たちの想像を超えるアプリケーションもでてくると思います。例えばインターネットができたばかりの時、今後何に使えるんだろうというように、E メールという使い道も想像できなかったレベルだと思うのですが、それと同じです。インフラなので、まだ今後利用拡大のきっかけとなるアプリケーションや新しい使い道などが登場してくるかと思います。それこそオープンソースなので、具体的な中身は未知数であるというのが良いところですね。10 年後お茶を飲みながらすごいなあ、こういうのがあるんだなあなど言っていたいです(笑)。

ーイーサリアムで作られた ERC20 トークンの時価総額が直近上がってきているかと思うのですが、それはイーサリアムが目指すプラットフォームからみてどのように考えていらっしゃいますか。

そうですね、価格自体はそこまで気にしないようにしていますが、技術やメリットに対する評価が価格に反映されているのが理想的ですね。最初のころは全く反映されない時期もあったので。
今イーサリアムが一旦落ち着いてから伸びてきているのを見ると、本当の可能性を理解してもらって伸びてきていると捉えられるのでそういう見方をすると良いと思います。ただ、アプリケーションによって用途も違うので、一概にこういう使い方が良いとか悪いとかは個人的な意見になってしまうので言えません。

ー貴重なお話をありがとうございました!

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