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専門家に聞く、この時代におけるゴールド投資の意味

本日当社が近日取扱い開始を発表したジパングコインは金価格に連動することを目指した暗号資産です。(キャンペーンもやってます!)
しかしbitFlyerユーザー様の中には金の価格を普段見ない方も結構いらっしゃるのでは・・・?ということで、投資対象としてのゴールドをどのように見ればよいか、貴金属のスペシャリスト日本貴金属マーケット協会代表理事の池水雄一さんとbitFlyerで一番のゴールドファン、加藤さんに語っていただきました。

ゴールドの歴史と価格推移

池水さん:まずこのチャートを見てください。アメリカのマネーサプライとゴールド価格のチャートです。

マネーサプライとゴールド、出所:一般社団法人日本貴金属マーケット協会

第二次世界大戦以降世界はブレトンウッズ体制ができて、金1オンス=35ドルで固定され、ドルと他の通貨も固定相場だった、つまり金本位相場だったわけですね。これは1944年から1972年まで続きましたが、それが1971年8月15日、ニクソン大統領が日曜日の8時に金とドルの兌換をやめる、と言ったのです。これがニクソン・ショック。
金に裏打ちされていた通貨がFiat Money(不換通貨)になって中央銀行が「お金を刷る」ことに対しての制限がなくなった。つまりどの政府もどの通貨も発行したいときに発行できるようになりました。1971年から今までの間にマネーサプライは35倍になり、ドルの価格は50倍になっています。

bF金光:希少性のあるゴールドの価値が相対的に上がっているのですね。このチャートは初めて見ました。うちの両親もゴールドの積み立てをやっておいてくれれば・・・。

bF加藤:僕は2012年に実はショートポジションから金の投資を始めたのですが、いろいろな本などで勉強して2016年からゴールドをロングしています。

池水さん:ここ20年間で見ても、各国通貨に対してゴールドの価値は上がっている、というよりゴールドに対して各国通貨の価値は落ちています。

20年間でのゴールド価格の推移、出所:一般社団法人日本貴金属マーケット協会


これがゴールドを持っておくべき最大の理由だと思っています。
日本人の給与で入ってくる円の価値ってどんどん下がっていっています。コロナで 幸か不幸か外に出られなかったのであまり感じることはなかったかもしれませんが、僕は最近3年ぶりにシンガポールにいったら1SGD=65-85円のつもりでいたら1SGD=100円になっていてびっくりしました。円の購買力が本当に落ちています。
足許円安ドル高傾向は少し戻していますが、日本の少子高齢化、ほぼほぼ成長はゼロ という状況が変わるのは難しいかもしれない、その状況ではゴールドを円建てで持っておくことは通貨のヘッジにもインフレのヘッジにもなります。

ゴールドと「デジタルゴールド」ビットコイン


bF加藤:何百年の歴史を見ても紙のお金はいつかは崩壊してきています。何千年も前からゴールドはありますが、足許「デジタルゴールド」と言われる暗号資産も出てきました。池水さんはどう見ていらっしゃいますか?

池水さん:今のFTXの件は暗号資産自身の信頼性というよりも交換業者に対する信頼性が問われているよね。ビットコインとゴールドもすごく比べられますが、自分としては同じ目線では見れないかなと思っています。こちらがゴールドとビットコインの時価総額のチャートです。有史以来ずっと五千年間ずっと人間に価値を認められているゴールドと、生まれて13年のビットコイン。まだわからないよね

ビットコインとゴールドの時価総額の比較、出所:一般社団法人日本貴金属マーケット協会

bF加藤:歴史の違いも大きいですが、「実物」があるかないかという違いも大きいなと、現物を買ってみて思いました。この場所にもゴールドのバーがありますが、これに価値を感じるのは人間の本能なんでしょうね。
ビットコインとイーサリアムにはデジタルで動かせる、記録が残せるゴールドとシルバーというイメージはありますが、ビットコインについては2140年にマイニングがなくなるとセキュリティの問題が出るのではないか、2兆ドルのビットコインがUS$10bn出せば51%攻撃ができるなどの点は懸念点です。

池水さん:一年に一回母校の上智大学で講義をする際にゴールドのバーを持っていきますがやはり本物の金を見ると学生たちは喜びますね。

マクロ経済、世界情勢とゴールド

池水さん:これからの金融システムがどうなるか、というのもゴールドへの投資を考える上では重要なポイントです。FRBが金利を上げてきていますね、米10年金利が少し前まで1%もなかったのに足許4%まで急激に上がっている。ここまで急激な動きは1980年以来です。足許この過程でゴールドの価格は2,000 ドルから1,600ドルまで下がりました。ゴールドは金利は生まないから金利が上がるとゴールドにとってはマイナスなんです。
ところが、今回はゴールド価格が1,600ドルのところで強烈な現物の買いが入った。インド、中国、サウジアラビア、タイなどが買ったというのと7-9月には400tというとんでもない量をどこかの国の中央銀行が買った、ということがWGC(World Gold Council)により発表されました。

bF金光:400tのゴールド!なぜ彼らはゴールドを買うんですか?

池水さん:国際情勢が反映されています。通常外貨準備というのは最も信頼されている世界の基軸通貨、ドル建ての米国債にしておくことが多いです。しかし、足許のロシアと西側の対立の構図の中で米国債を持っていることのリスクが意識されています。
今まで戦後続いてきたこの体制、アメリカを中心に成功できていたものが変わりつつあります。ニューオーダーという感じですね、その時に選ばれる価値のあるもの、のひとつがゴールドということです。

ゴールドのリスクは?

bF金光:ビットコインはハードウェアウォレットにいくらでも入れて持ち歩ける、という「ポータビリティ」がゴールドより良い点だ、というのも2020年頃からビットコイナーの間で語られました。400tの金を買った、と言っても中銀はできるのかもしれないけど普通は保管できないですし、ほんとにちゃんと自分の分の在庫があるのか、というのはどうやって確認できるんですか?

池水さん:LBMA (LONDON BULLION MARKET ASSOCIATION)という世界のゴールド取引のルールも決める業界団体があり、その規制機関は英国銀行ですが、その機関が認めたクリアリングバンクに世界のゴールド取り引きをする銀行などの金融機関や、現物取り引き業者が口座を持ち、そこでゴールドの残高は管理されています。
この口座で決済をするゴールドの価格のことをロコ・ロンドン・ゴールド価格と呼び、我々が普段目にするドル建てのゴールド価格は、基本的にはこのロコ・ロンドン・ゴールド価格です。ロンドンのゴールドクリアリングバンクはみな、英国銀行に口座を持ち、決まった準備率により現物のゴールドを英国銀行に預けています。これは通貨と全く同じ仕組みです。
ロコロンドンゴールド価格は現物の請求権、と考えることもできて、請求すれば例えば現物を東京に持ってくることもできます。

bF加藤:それ以外の金のリスクってどうでしょうか。 自分が気になっているのが、ひとつには宇宙のリスク、火星と木星の間の小惑星に今の地球上の全GDPの5倍相当の金塊があって、NASAが持って来ようとしているという話を聞きました。もうひとつは海のリスク、海中や海底には地上の8倍の金があると言われていて、コストが高いけれど来年の7月には海底を掘りに行くプロジェクトが始まると聞いています。

池水:地上に存在するゴールド埋蔵量は5万トンと言われています。地球上には全部で20万トンのゴールドがあって、そのうちの5万トンがまだ地中にあるよ、という状態です。ただこの5万トン、というのは今掘るコストが掘り出す金の価値に対して十分小さく、経済的に意味がある量のことなんです。
今はゴールドは一番採掘量が多いのが南アフリカで、1年1000トンくらい掘っています。
30年前石油の埋蔵量はあと30年と言われていたけど、今も30年と言われているでしょ?これはシェールのような新たなソースが発見されたり、石油採掘技術が向上しているからです。
海水に溶けている金は50億トンと言われているのですが東京ドーム7-8杯分の海水を集めてやっと1gの純金がとれる、というレベルでコストが合いません。
宇宙もだいぶ前からゴールドやプラチナを取りに行く試みはあるけど、コストは合わないよね。

個人がゴールドに投資する際に考えることは?

bF金光:ここまで池水さんと加藤さんのお話を伺って、ゴールドへの投資ってすごくよいのではと思ったのですが、あまり個人投資家に人気があるイメージがありません。どうしてでしょうか?

池水さん:たしかに、投資マーケットの本家本流ではないですよね。過去先物などで事件もあったので、 あまりいいイメージを持たれてないのかもしれません。僕や協会はゴールドとはこういうものですよ、というのを伝えていく活動を行っています。

bF加藤:資産を代々受け継いでいく、相続にも実は向いていますよね。このバーで800万円相当なわけですから。

池水さん:そうですね、相続税の問題はあるけど、相続にも向いていますね。金の本質的な価値はこのままの姿で永遠に残るということですね、鉄とか銅とかと違って錆びたりすることもありません。
例えばダイヤモンドは人工ダイヤモンドの精度が上がってきていたり、加工の好き嫌いがあったりして投資に向いてないと言われています。

bF金光:そうか、「人工ゴールド」はないのですね!

池水さん:元素は人間にはいじれないからね。チャート的には、ドル建てのこれまでの最高値2170ドルを抜けたら上を目指す、と見ている人も多いです。

2013年以降のBitcoin価格(オレンジ)、ゴールド価格(ピンク)の推移、
出所:一般社団法人日本貴金属マーケット協会

bF加藤:個人にとっての投資対象としてはモメンタムとボラティリティ、上に抜けたときのスピード感が重要だと感じています。ビットコインも2020年に機関投資家が入ってきてからの上昇のスピードが早かった。

池水さん:個人でゴールドを買うのなら、例えばBullionValutという会社だとロンドンで分離保管してくれているよ。出せと言えばシッピングコストはかかるけれど現物を出してくれます。
ETFは商品によってはゴールドの現物を分離保管しています、ETFに似ているけどETPという商品は事業者が実際の金を持つことは求められてないけれど金価格に連動する金融商品で、投資家としては業者のリスクを負っていることになります。

bF金光: 円建てゴールドは今ヒストリカルハイに近いところにいて、高値掴みが怖いのですが・・・。

2004年以降の円建てゴールド価格(オレンジ)、ドル円レート(ピンク)の推移
出所:一般社団法人日本貴金属マーケット協会

池水さん:過去のことを気にしてもしょうがないけど、高値が怖いと感じるのであれば純金積み立てのような毎月決まった金額分をドルコスト平均法で買っていくというのは一つの方法でしょう。

bF金光:池水さんはポートフォリオの何%くらいをゴールドで持っておくことをおすすめされていますか?

池水さん:5-10%を持っておくことが自然かなと思います。日本人は給与支払いを受けて何もしないと円ばっかりになってしまうので、外貨に分散するのと同様にゴールドにも分散するイメージかな。

人類とゴールドの歴史

池水さん:ゴールドは鉄、銅、アルミなどと比べて圧倒的に希少価値が高いんです。現状は鉱山生産量は約3600トン/年ですがどんどん減っていきます。
有史以来掘られて来たゴールドの量は、22メートル四方の立方体にすっぽり入るくらい。それだけしかないという圧倒的な希少価値があります。
インドや中国に行くと金がすごく高価なものとして見られているな、というのを日本にいるときより感じます。
日本人はもともとシルバーの方が好きな傾向があって、江戸時代日本ではシルバー5に対してゴールド1で取引されているところ、欧米ではシルバー15に対してゴールド1だったので、欧米の商人がシルバーでゴールドを日本から買い上げていったという話も残っています。

bF金光:アービトラージトレードですね!

池水さん:今はシルバー80に対してゴールド1という比率で取引されています。

bF加藤:人類の歴史で、ビリオネアが貧乏になるときは戦争、ハイパーインフレーションが起きるときでした。両方起こっている今、ゴールドはもっと投資対象として注目されてよいと思っています。

bF金光:最後にしょうもない質問なのですが、冒頭から池水さんが「五千年」と仰ってますが五千年前に何があったんでしたっけ?

池水さん:それはもう、有志以来ということです。人類の最古の歴史から、人類はゴールドとともにあって、価値を感じています。ツタンカーメンは三千ー四千年前かな、ゴールド以外のものは皆なくなってしまってその時他に何があったかは分からないけどね。

ツタンカーメンの黄金のマスク

bF加藤:半導体などテクノロジーにもいろんな用途で使われだしています。希少性はあがり、用途は広がる、という見方になるのかなと個人的には思っています。

bF金光:今日はゴールドについていろいろ教えていただきありがとうございました!ゴールドのバーを持って写真お願いします!

左:bitFlyer セールストレーディング部長加藤さん、
右:一般社団法人日本貴金属マーケット協会代表理事 池水雄一さん