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NFT発IPの可能性とは?VeryLongAnimalsファウンダーAKIMさんに聞きました

2022年2月ごろからTwitterのタイムライン上で顔の長い動物たちのドット絵がやたらと目に付くようになりました。フィジカルのイベントでも顔の長い動物の着ぐるみを見かけます。ベリロンとはなんなのか、何を目指しているNFTプロジェクトなのか、ファウンダーのAKIMさんに聞いてきました。
今回、bitFlyer×ベリロンのオリジナルNFTプレゼントキャンペーンも行っているのでぜひこちらのTweetをRetweetでご応募ください!

イベント会場でのAKIMさん

「ベリロン」ってなんですか?


bF金光:NFT「VeryLongAnimals」(通称「ベリロン」)の基本情報について教えてください。顔の長い動物たちはTwitterなどですごくよく見かけるのですが、いつからスタートして、何体あって、などよく考えればあまり知りません。少し前、気に入ったベリロンがあって買おうかなと思ったら想像の10倍以上の価格でびっくりしました。

2022年11月20日時点のOpenSeaのVeryLongAnimalsコレクション

AKIMさん:ベリロンは2022年の2月25日にスタートしていて、8カ月半くらいのプロジェクトです。(注:インタビューは11月に行われました)
Genesisコレクションは100体くらいで少ないのですが、二次創作コレクションが200シリーズくらいはあって、こちらはGenerativeのものもあるので全部で体数は5万体くらいはあるのかもしれません。
ベリロンのホルダーさんは二次創作のホルダーさんも入れると何千人とか、1万人くらいいるかもしれないです。
Genesisのフロアプライス※は今は4.5ETHくらいですかね。ただ個数が少ないのですごくぶれます。フロアの意味合いは1万体ほど発行されるコレクションとは異なるので、発信の仕方としても、フロアを過度に追いかけるということはしていません。
(※フロアプライス:NFTコレクションですぐに購入できる状態の作品の中で最も安い価格)

bF金光:フロアプライスがそれだけ高いということ自体がブランディングにもなると思うのですが、なぜ発信されないのでしょうか?

AKIMさん:Generative※のように個数が多いコレクションだと今出ている最低価格、というのは意味のある指標なのかもしれませんが、ベリロンGenesisは100体しかないので、あまり有効な指標ではないと思っています。
たぶん今一番安いのはネズミなんですが、「売り板」が極端に薄くて、こういうフロア付近のものがいくつか買われるとすぐにフロアが2倍になったりします。100体くらいだと個別性が強いんです。フロアプライスは5-10ETHくらいのときが多いですね。
今までで一番高い取引はセカンダリーだと10ETHで、 プライマリーだと9ETHです。
(※Generative:いくつかのパーツをプログラムで自動的に組み合わせて生成される作品)

bF金光:他のNFTコレクションとの違い、VeryLongAnimalsの特徴はなんでしょう?

AKIMさん:一つ目が、作品数が極端に少ないところ。二つ目は二次創作が多いところ。三つめが、一個一個の絵がユニークなところ。
あとは、「ポテト」というポイントがあってコミュニティに貢献してたらポテトがもらえて、それでベリロンが買える、という仕組みがあるところもユニークですね。「ポテト」もあるのでオンチェーンのイーサリアムの価格だけではベリロンの価値はわからないんですよね。

bF金光:1イーサ、1万ポテトで買ってるときはオンチェーン上は「1万イーサ」としてしかでないけど、実はそこには「1万ポテト」の価値もあるよ、ということですね。とてもユニークですが何か参考にしたプロジェクトはあったのでしょうか?(ポテトってなんだ・・・?あとで深堀りしよう)

AKIMさん:特にないんです。素人で始めて、プロジェクトにしようと思ってなかったので。Nouns※は好きだけど、特に参考にはしていないです。
(※Nouns:オンチェーンでミントされる32×32ピクセルのドット絵のキャラクターをモチーフにしたNFTのシリーズ作品。)

NFT「Nouns」のページ

「ベリロン」が愛される理由


bF金光:丸ノ内での期間限定のベリロンカフェ、DMM亀山さんとの対談、フェンシング太田さんがベリロンをアイコンにされたりと私から見ていると急に人気が出たように見えました。ベリロンが愛される秘訣はなんでしょうか?

丸ノ内で行われた「VERY LONG CAFE」

AKIMさん:NFTは知識が無いと追いつけないなどハードルの高いコレクションが多い中、べリロンは長い×動物でわかりやすかったというのがあります。わかりやすくて、誰も傷つかない。
クールなもの、かっこいいものって、「わからないの?知らないの?」という雰囲気があると思うのですがベリロンにはそれがありません。
いろんなコラボレーションは、そうですね、僕がコスプレしてイベントにあちこち行っているので話しかけやすいのかもしれませんね。

bF金光:丸の内のカフェ(2021年9月に期間限定で開催済み)もそんな感じで決まったんですね。

AKIMさん:オフラインイベントでいい話をいただくことが多いです。今IRL※がはやっていて、コラボレーションはオフラインの場でお話を頂いて決まっていますね。営業をがんばっています。
(※IRL:In Real Life。フィジカルに行われるイベントのこと)

bF金光:いろんなコラボレーションにもクオリティは高く対応されてますよね。カフェのクリエイティブもとてもかわいかったし、今回作っていただいたキャラクターもすてきです。チームで対応されてるんですよね?

AKIMさん:はい、チームにデザインできる人は多くて、ビジネス系の人でもクリエイティブ作れたりします。二次創作で集まってるコミュニティがあってそこで声をかけたりしています。

bF金光:ベリロンチームは何人くらいいらっしゃるんですか?イベントで見かけたことありますがみなさん仲がよさそうですよね。

AKIMさん:週40時間くらい働いている人もいますが、基本的にはみんな好きなタイミングで働いてくれています。半分DAO、半分会社みたいな感じです。運営チームは優しい存在でいてほしいです。他のコミュニティは価格が上がってる、下がってる、という話が多かったりするのですが、ベリロンではそういうのは少なめな気がします

Founder AKIMさんの歩み


bF金光:AKIMさんは昔からものを作るのが好きだったそうですが、大学では情報工学を学ばれていて教育関連事業を立ち上げられようとしたところベリロンを作り始めた、というインタビューを見ました。この辺の経緯を教えてください。実は大学で暗号を学んでいて暗号資産マニアだったとか?

AKIMさん:大学で学んだことがビットコインとつながったことはないですね。
研究室は分散情報システムだったのですがブロックチェーンの勉強はやってなくて、ブロックチェーンとは関係のないエンジニアとして大学生の頃から働いていました。暗号資産との関りは、ICOバブルのときにアカウントをbitFlyerに開けたくらいです。

bF金光:おお、bitFlyerユーザーさまでしたか、ありがとうございます!

AKIMさん:京都大学の大学院生でエンジニアとして働いている中、PMをやり始めたことで自分はプログラムを書くよりもビジネスを絡めたほうが向いているなと思って先輩の教育関連の事業の手伝いをしたのですが、メンバーとすれ違いとかもあってそこは卒業して、急に留年して会社もやめて、やることがなくなりました。自分の貯金をはたいてテントを買ってテントサウナサークルを作って2ヶ月くらいテントサウナを京都の川辺に作ってました。京都のおばさんにすごい怒られましたね。
そのあと起業して教育系ビジネスの自分の会社を作って最後の方はVtuberの美少女がほめてくれるというのを作って、これはアメリカの人に見てもらいたいなと思い親からお金を借りてアメリカに行きました。その借りたお金が無くなってどうしようかと思って描き始めたのがベリロンです。思いついた日に描いて、メタマスクも初めて設定してmintしました。最初8体出したらいきなり売れたんですよね。
そのあとは数週間、一日10時間くらい描いて、数週間で40体作って売れました。

bF金光:それが今年の2月とか3月ってことですね?まさかアメリカで描いて売っていたとは・・・。しかもほんとに裏側に何のコネもなく、クリエイティブのパワーで売れたんですね。

AKIMさん:アメリカにいたので僕日系アメリカ人だと思われてましたね。よく〇〇案件とか言われますがほんとに裏側とかはないです。あとはTwitterしすぎちゃう体質なので、そのときは一日100ツイートくらいしてました。当時は絵を描くのも、コミュニティ運営も全部一人でやっていました。それなりに売れてきたのでメンバーを増やしていきました。

bF金光:今はベリロンをがっつりやっているんですね。

AKIMさん:僕ぱっとしない学生起業家だったので。ベリロンが売れた瞬間、僕がこれまで出したものの中で一番楽しいなと思って。
それまでも教育事業などまじめなネタで起業しようとしてましたが最後の方はVTuberの美少女を出したりふざけた方向に行ってたので、これなのかな、と。

bF金光:ドラマ「ノンファンジブル」のたつるはAKIMさんの歩みが反映されたキャラクターだったんですね。ラップバトルも実話でしょうか?

AKIMさん:ベリロンが高くなってきて買えないよ、となったときにラップバトルで勝った人にベリロンをあげる、という企画をやりました。僕HIPHOP好きなので。

コミュニティとコミュニティを育てる「ポテト」


bF金光:ベリロンの特徴として「二次創作が多い」を挙げていらっしゃいましたが、二次創作に関するAKIMさんの考え方を教えてください。

AKIMさん:コンテンツと二次創作に関する考え方には色んな流派があります。
極端な考え方だとCC0※から、普通のIPみたいに何もやっちゃダメ、というものまで。ベリロンはCC0ではないですが、だいたい二次創作OKにしています。
このようにしている理由の一つは、ベリロンGenesisの値段が高すぎたり、売り出しても1秒で売れてしまったりして、ベリロンが持てないというフラストレーションがある人がいたことです。こういう人たちの中で自分のベリロンを作りたい人には作ってもらいたいなと思ったという局所的な理由です。
もう一つの理由は、大局で見るとこれまでのNFTよりちょっとオープンになるかなと思いました。二次創作が増えることで正のフィードバックが生まれ、価格に公共性がある形になる、価格がダイナミックに決まるからこそ二次創作が盛り上がるのかなと思っています。
(※CC0:著作権が生じている著作物やデータについて、自発的に権利を放棄してパブリックドメインにしようという宣言)

bF金光:VeryLongAminalGirls、VeryNemuiAnimals、VeryLongAnimalBabiesなど、200シリーズ近くあるんですね。AKIMさんはこれらのシリーズをどう思ってますか?

上:VeryLongAnimalGirls
下:VeryLongAnimalBabies

AKIMさん:ありがたいなと思ってます。勝手にやってください文化なんですが、二次創作のコミュニティでスプラトゥーン大会が開かれていたりします。
同じIPなんですけどスレッドがわかれている感じで、僕も追い切れてないです。自分の予想しなかった方向に進むのが面白いです。

bF金光:二次創作をやられてる方のインセンティブってなんなのでしょう?

AKIMさん:儲けたくてやってる人は当然います。ただ、ベリロンをもっと盛り上げたいという内発的な動機を持つ人もいて、ベリロンというIPを自分が主役になって拡げたいという動機で動いてくれています。
そういう人にポイントである「ポテト」を渡していって、二次創作をがんばったら「ポテト」が貯まっていつかGenesis買えるかもしれない、という設計にしています。「ポテト」は今は運営側の配る役の人がいます。
僕が好きなNFTのNounsも超高くて、フロアが100ETHとかします。コントリビューターにもETH持ってないとなれない、となっていてここは独自のポイントなりトークンなりがあった方がよいと思います。

bF金光:独自経済圏みたいなものを作っていく際にFungible Tokenって重要ですよね。

AKIMさん:僕たちは「ポテト」を使っています。価値を生んでくれたことがすぐに消えてしまわないように、ポテトというポイントを付与してその人が出した価値を保存するんです。そうするとみんな価値をもっと出したいという形になるのかと。
「ポテト」がお金と紐づくと難しくなってしまうんです。働いている時間、投資している時間との比較になってしまう。
例えばSTEPNは歩いて楽しくてちょっと稼げる、ではなくて「稼ぐために歩く」というのが加熱してだんだん投機的になっていきましたよね。
投機的にならず、いかに内発的であり続けるかがコミュニティを育てていく上で大切です。

bF金光:コミュニティにとって「ポテト」の存在は大きいんですね。

AKIMさん:こういった考え方を海外に説明していくのはたいへんです。NFTは海外ではマネーゲームの要素が大きいと感じます。「ポテト」は日本ぽいね、という反応をされます。
「ポテト」のユーティリティはベリロンGenesisが買えるかも、というのの他にベリロンのグッズが買えるかも、というのもあるし、クリエイター向けにiPadなどもあります。先日僕はNFTLondonに行ったのですが、「ポテト」のユーティリティとしてロンドン行きの航空券を渡してコミュニティの二人に同行してもらいました。

今後のベリロン、Web3、日本

bF金光:今後のベリロンの展望などを伺っていきたいのですがその前に、そもそもAKIMさんにとって「Web3」とか「Web3企業」ってなんですか?

AKIMさん:「Web3」という言葉に定義がないな、人によって違うな、というところですが、僕がすごいなと思ってるのは世の中の理(ことわり)がプログラムできるところですね。
データとかそれを扱うプログラムとかってTwitter、Googleとかプラットフォームでしか有効じゃなかった、それがイーサリアムとかでむき出しになってる、ドラゴンクエストのルールがTwitter、Discordでも使える、みたいなことが起きています。それを使ってエンタメを作るのが面白いな、と思っています。NFTにしてもデータがいきなりある、プラットフォームにデータがあるんじゃなくていきなりむき出しのデータがあるというか。そこがすごいなと思っています。

bF金光:NFTのトレンドの移り変わりは早いですし、規制の話も各国で出てきています。この辺はどうとらえていらっしゃいますか?

AKIMさん:規制はなんとも言えないですね。僕も弁護士の先生と議論しながらプロジェクトを進めています。アメリカ中心に海外の方が規制しなきゃ、という感じが今は強く、日本ではブラックボックスじゃないところでの動きやすさはあります。
一方、マーケティングとかコミュニティの観点では日本語圏だけにいてもだめで、英語圏、海外には出ないといけないのでそこのバランスが重要です。
最近海外では「日本のNFTが盛り上がっている」という話になっていて、そうなるとベリロンも見られるのでありがたいです。

bF金光:今後、Very Long Animalsは何を目指していきますか?

AKIMさん:やりたいことの軸は大きく3つです。
一つ目は広い意味でのメタバース。メタバースって言うと3D空間があって、というサマーウォーズみたいなのを思い浮かべますが、必ずしもそうでなくて、IPに紐づいて人が集まってるエコシステム、IPの世界観に基づいて人が集まっているというイメージです。ベリロンの世界観のもとにコミュニティのメンバーがTwitter、Discord、Clusterでも集まって、その世界観に参加することで、現実の世界とは違う、ベリロンののびのびした世界にも自分のアイデンティティを持てるようにする、というのがやりたいです。
二つ目は、その世界を大きくするために海外の人をちゃんと巻き込んでコミュニティを作っていきたいです。
三つめは、脱フロアプライスのNFTのコレクションを出していきたいです。普通のものってフロアプライスで見ないですよね、Nikeのスニーカーが欲しいな、というときに世の中で一番安いNikeのスニーカーを探したりしません。フロアプライスで見るのって、すごくFungible Token的な見方だなと思います。
民主的PFP(プロフィールピクチャー)の新しい形を作って、100万枚とか、洋服を売るような感じにしていきたいですね。
ホルダーの方が俺はこの動物なんだと感じられるアイデンティティを価値にしていきたいです。

bF金光:なるほど、以前あるイベントで会った方がベリロンのTシャツをこっそり着ていて私が気づいて言及すると「自分はホルダーでカワウソなんです。」とすごく誇らしげにおっしゃっていたことを思い出しました。彼はカワウソであることが一個のアイデンティティなんですね。
以前のインタビューでAKIMさんが世の中を便利にするのは大企業に任せて、自分たちは世の中を面白くする方をやっていきたいと仰ってたのが印象的でした。

AKIMさん:日本的なカルチャーは世界で見ても強くて一定の評価があります。歴史的にもそうでしたし、現時点でも現実的な問題として、産業として戦いやすい領域です。
ベリロンを世界中で愛されるキャラクターにしていきたいです。

AKIM
VeryLongAnimalsのFounder/Creator。 顔が長い動物のインターネットミームを楽しみながら、CC0に近いオープンな二次創作文化や「ポテトポイント」を使った独自の貢献度評価によって運営。投機性よりもコミュニティに重きを置くことで、日本で最も熱量の高いコミュニティを持つNFTコレクションとして盛り上がっている。