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ビットコインマーケットレポート 2020 ~2020 年末までの動向~

様々な動きがある仮想通貨(暗号資産)の世界ですが、2020 年のマーケットはどのように動いたのでしょうか。2013 年から仮想通貨(暗号通貨)の動向を追っている個人投資家の児山 将氏に、マーケットの振り返り及び、2020 年末までの動向を分析いただきました。

はじめに

2020 年前半の仮想通貨(暗号資産)市場は、乱高下。年初大きく上昇したと思えば、コロナショックにより年初来安値を大きく割り込むほどに急落。その後は、ビットコインの半減期や分散型金融(DeFi)人気などの影響から、堅調な上昇相場が続いています。

明るい相場が続いていますが、今後の仮想通貨(暗号資産)市場はどうなるのでしょうか。ファンダメンタルズ分析を中心に、2020 年末までのビットコインの動向を読み解いていきたいと思います。

押さえておきたい材料

筆者は、ビットコインはデイトレード等の短期売買、アルトコインは日足ベースの大きな流れを取りにいくスイングトレードをメインに取引しています。

売買の判断として、短期はポジション動向などの需給、中期はハッシュレートや新規マネーの流入、法規制などのニュースを基にしています。

目先のビットコインは、コロナ禍における世界的な緩和マネーや経済政策の動向。中期的には、ハッシュレートやアクティブアドレス数の推移、中国やロシアなどの大国の動向が重要になってくると考えています。

それぞれの材料に関して、解説していきます。

1.給付金の一部が仮想通貨(暗号資産)市場へ流入

仮想通貨(暗号資産)市場は新しい市場のため、新規マネーの流入によるインパクトが大きくなります。なかでも印象的だったのは、米仮想通貨(暗号資産)取引所に 1200 ドルの入金が相次いだことです。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気対策として、個人への現金給付(1200 ドル)が行われました。給付金が振り込まれたのが 4 月 16 日。そして、同日に取引所への入金が殺到しました。

ビットコインは 4 月 16 日に 70 万円から 77 万円台後半まで 10% も急騰しました。これは給付金がビットコインに替わり、価格を押し上げた可能性が非常に高いと考えられます。

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出典: bitFlyer Lightning BTC/JPY 現物チャート(日足)

これは、今後も何度か起こる可能性が高いでしょう。実際に、7 月 26 日にムニューシン米財務長官が、共和党の新型コロナウイルス対策法案を翌日に発表すると明らかにした際に、大きく相場が動きました。

再び給付金が振り込まれると、ビットコインに投資されることを見越した思惑で買いが殺到したのだと考えられます。米国の手厚い支援の一部が株式市場や仮想通貨(暗号資産)市場へ流れているのは間違いなさそうです。

2.世界的な金融緩和とゴールド(金)の上昇

新型コロナウイルス対策として、各国政府・中央銀行は大規模な財政出動と金融緩和を行いました。特に FRB の金融緩和は凄まじく、2018 年から減少傾向にあったマネタリーベースは瞬く間に急増。過去最大値を 10% 以上も超過していきました。

それに反応したのが金です。米ドルの希少性が下がることで相対的に価格が上昇。史上最高値を更新することとなりました。これは、デジタルゴールドとも呼ばれるビットコインにも同じことが言えます。タイミング良く 5 月に半減期を迎えており、需給は改善。金の上昇を後追いするかのように、ビットコインも上昇に転じています。

ただし、注意しておかないといけない点は、金が劇的に動くような相場でしか連動性は薄いということです。中期的には、次に挙げるハッシュレートとアクティブアドレス数がビットコイン価格との相関性が高いことが分かっています。

3.ハッシュレートとビットコインアドレス

ビットコインのハッシュレートは、右肩上がりに上昇を続けています。ハッシュレートとビットコイン価格が連動するのであれば、ビットコインは 200 万円を突破しているのが自然なのですが、実際には難易度調整やマイニングマシンのスペックアップなどがあるため、理論価格を求めるのは困難です。

2020 年のハッシュレートの推移見てみると、緩やかに上昇しており、価格も連動傾向であることが分かります。

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出典:coinwarz

つまり、ビットコイン価格とハッシュレートはある程度の相関性と下値を探るための参考値程度にはなると言えます。

もう少し理論的な下値を知るための方法として、ビットコインのマイニングコストがあります。これは、金の価格が採掘コストを下回り続けることはないことから、ビットコインでも同じ考え方を採用する方法です。

マイニングコストについては、マイニング事業者や近い人に定期的にヒアリングを行うという地道な調査を行っています。7 月時点でのマイニングコストは、およそ 92 万円程度。カザフスタンやイランではもう少しコストが下がるようです。

次に、ビットコインのアクティブアドレス数の推移を確認してみましょう。

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出典:Glassnode

2017 年のピーク時やその後の急落、2019 年の上昇相場などと連動していることが分かります。注目していただきたいのは、2020 年の春以降にアクティブアドレスの下限が引き上がっていることです。

直近のアクティブアドレス数は 110 万をマークしており、2019 年の最高値を突破しています。これはユーザー数が増え、新規マネーの流入が続いているとも考えられることから、150 万円を突破する可能性を示唆していると考えられます。

では、次に実際のビットコインの購入ペースがどのようになっているのか、投資ファンドの動向を見ていきましょう。

4.グレイスケールの投資信託動向

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米大手仮想通貨(暗号資産)市場ファンドであるグレイスケールは、仮想通貨(暗号資産)市場においてクジラ※とも言える存在です。※市場において運用資産の大きな機関投資家などを指す

同ファンドの預かり資産は右肩上がりに上昇しており、2020 年上半期にそれまでの約 90% も増加しています。増加ペースは凄まじく、1 - 3 月が 5 億  370 万ドルだったのに対して、4 - 6 月は 9 億 5080 万ドルとほぼ倍増。7 月末時点では、およそ 4870 億円、39 万 BTC を保有しています。

6 月には約 5 万 BTC を買付けており、これはマイナーの得る新規発行枚数の 2 倍にものぼります。つまり、変動がなかった 107 万円から 97 万円へ下落した 6 月11 日や、95 万円を付けた 6 月 15 日は恐らくグレイスケールの買いが入り下髭となったのではないでしょうか。

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出典: bitFlyer Lightning BTC/JPY 現物チャート(日足)

6 月のような売買代金が低迷した状況において 500 億円もの BTC を売買することは、そういった急落時でないと厳しいでしょう。 OTC 取引とはいえ、最終的にはどこかで BTC が購入されるわけですから、当然市場に影響を与えることになります。これは、ビットコインの強烈な下支え要因となります。

値動きを見てみると、急落した翌日には反発していることから、そのあたりでグレイスケールの資金が流入したと考えられます。

そんなグレイスケールは、8 月 11 日から全米で CM を開始しています。

グレイスケールは代表的な例ですが、他にも巨額の資金が流入しているというニュースが相次いで報じられています。例えば、著名ヘッジファンド運営者のポール・チューダー・ジョーンズ氏は、自身の資産 1% をビットコインに投資していることを明らかにしました。

また、ビジネスインテリジェンスサービスを提供するマイクロストラテジーは、インフレヘッジ手段としてビットコインを購入。今後、12 カ月で最大 2.5 億ドルをビットコインや金などの代替資産に投資する戦略だそうです。これらは、大規模な金融緩和の他にも、ビットコインへの投資環境が整ってきている結果でもあると言えるでしょう。

5.bitFlyer の預かり資産の推移

国内の投資家動向を見る指標として、bitFlyer の預かり資産の推移を見ておきましょう。

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株式会社 bitFlyer 月次開示情報 預かり資産(仮想通貨および法定通貨)
単位:百万円

2020 年 6 月末の預かり資産はおよそ 1300 億円。12 月からは 3 割アップとなります。ビットコインとの連動はもちろん考えられますが、そうであれば 2 月、3 月に大きな落ち込みがあってもおかしくありません。相場が大きく戻した 4 月、5 月に預かり資産が大きく増えており、1 月の水準を超えていることから、新規マネーの流入が続いていることが考えられます。

6.キャピタルフライト

かつて、ビットコインの最大の買い手は中国でした。これは、資産逃避(キャピタルフライト)が主な理由だとされています。表向きは、2017 年 9 月に人民元と仮想通貨(暗号資産)市場の取引が禁止されたものの、 海外仮想通貨(暗号資産)取引所では相対取引が行われている様子が分かります。

そのため、キャピタルフライトを禁じられるような動きが出ると、急激に取引高は加速しビットコインが急騰する傾向にあります。2019 年 6 月にビットコインが 150 万円まで駆け上がりましたが、これには、同年 7 月に開催された G7 財務相・中銀総裁会合で仮想通貨(暗号資産)の購入に本人確認が必須とされる可能性があったからだと筆者は分析しています。

6 月 25 日に財務省国際局が、そうは行わないとする資料を公開。ビットコインが 150 万円を付けたのは、翌日である 6 月 26 日でした。仮想通貨(暗号資産)の売買に KYC を行う流れは加速していますから、中長期的にチャイナマネーが仮想通貨(暗号資産)市場を下支えすると考えられます。

また、新興国では価値の保管としての役割を果たしています。 Coinhills によると、仮想通貨(暗号資産)を購入する法定通貨の 5 番手はトルコリラとなっています。

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出典:Coinhills

コロナショックにより自国通貨の価値の低下を乗り切る手段として、ビットコインが利用されていることは間違いなさそうです。

また、個人的に注目しているのがロシアの動向です。 7 月にデジタル金融資産関連法が可決。サービスや商品の支払いに仮想通貨(暗号資産)を使用することは禁止するものの、取引は合法だと定められました。

ただし、ロシア中銀の副総裁は仮想通貨(暗号資産)投資へ反対を表明しています。仮想通貨(暗号資産)規制のフレームワークは、別のデジタル通貨関連法が承認されてから( 12 月下旬に終了する秋の国会で可決が予定)になります。ロシアの法整備が、市場の盛り上がりを左右する可能性が高いのではないでしょうか。

ビットコイン、テクニカル分析

これまでに挙げた材料より、基本的にビットコインには強気な目線でいます。最後にビットコインのテクニカル分析から、目標値を確認しておきましょう。

まずは、現段階においてのステージを確認します。 2020 年のビットコインは、おおよそ 15 万円刻みで推移しています。年初来高値の 115 万円を突破した後は、 128 万円まで上昇した後に 114 万円まで急落。その後は、再び高値まで戻す動きを見せました。

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先に上げた材料や、徐々に下値を切り上げていることから、上方向へのブレイクが期待できます。そう考えると、128 万円 ~ 130 万円の節目を突破した後のターゲットは、145 万円が目標価格となります。ただ、2019 年の高値が 150 万円であることから、このあたりは 145 万円 ~ 150 万円と広めにとっておいた方が良さそうです。

なお、7 月 25 日から 27 日までの 3 日間でビットコインは 17 万円ほど急騰しました。新値を取った後に戻りがなければ、短期間で急騰していくことを念頭に入れておきたいところです。ポジション動向を見ても、130 万円より上は 1 年以上前の水準となり、売り圧力が極端に乏しいことが挙げられます。スカスカのなかで値が飛ぶ可能性は十分考えられます。

アクティブアドレス数の推移では、150 万円の突破も十分考えられますが、もう少しプラス材料が欲しいところです。ハッシュレートの上昇に加えて、金の上昇(ビットコインとの上昇比率のおよそ 3 分の 1)があれば、突破のための材料が揃うといえるのではないでしょうか。

撤退の目安としては、終値で 120 万円を下回った時点でしょうか。118 万円まで下げると、ポジションの巻き戻しが加速し、115 万円前後にあるストップロスを引っ掛けて急落するリスクが考えられます。

【ビットコイン 150 万円突破のための指標と目標値】
アクティブアドレス数: 105 万    → クリア
ハッシュレート:平均値で 150 EH/s →  130 EH/s程度
金の価格: 2085 ~ 3000 ドル     →  1950 ドル程度

下落リスクは新型コロナウイルスの急激な終息

ビットコインが下落に転じる最大のリスクは、コロナの終息ではないでしょうか。ビットコインが買われている大きな理由にインフレヘッジと法定通貨との相対的な希少性の高まりがあります。

現在、進められているワクチン開発が成功した場合はどうなるでしょうか?市場は半年後の経済を織り込みに走ります。これまで買われていなかった旅行、飲食、交通インフラなどの株式に一気に資金が集中。銀行株も反発が予想されることから、指数も押し上げる形となります。そうなると、金やビットコインに投資していた資金が一時的に引き上げられることとなり、急落することが考えられます。

皮肉な話ですが、ビットコインが輝きを増すのは、キプロス危機やコロナショックなど、世の中が厳しい状況にある時のようです。

まとめ

筆者が最初に仮想通貨(暗号資産)に興味を持ったのは 2013 年末ごろ。投資関連のラジオで、昔買ったビットコインが 1000 倍以上になったものの、ハードディスクを捨ててしまい広大なゴミ捨て場に放置されてしまった人がいるという話を聞いた時でした。その後に、 Mt.GOX の被害があったため、最初に投資を行ったのは XRP でした。

2016 年になり「中国人がキャピタルフライトとしてビットコインを買いまくっている」、「南アフリカで旅行中、どこの店でもビットコイン決済ができた」という話を聞き、これまで不可能だったことがビットコインの誕生により実現でき、大きなムーブメントが起きていることを感じました。それと同時に、自国通貨不安がビットコインへの投資を加速させるのだと実感しました。

時を経て 2020 年、新型コロナウイルスの影響で新興国は自国通貨安に苦しんでいます。しかしビットコインがあるお陰で、現地に住む人は以前よりも資産を防衛することができているのではないでしょうか?

ビットコインの利用するインフラや法整備が進み、その技術で価値を保存できたり、今よりもスマートな決済や送金ができるようになる未来が来ることを期待したいと思います。

投資家にとっては、価格が上がり続けることが良いことなのかもしれません。しかし、その影響で詐欺が横行したり、レバレッジ規制が厳しくなったりしました。国内では、投資できる仮想通貨(暗号資産)も非常に限定されてしまっています。個人的には、今以上にインフラが整い税金なども含めて法整備がなされることを切に願いたいと思います。


児山 将(個人投資家)

投資歴 12 年。2009 年から FX をはじめ、株式、CFD などの金融商品を取引。2015 年から仮想通貨への投資を始め、2017 年にはメディアの立ち上げも行う。2018 年以降は主にビットコインのレバレッジ取引に注力。投資判断は、投資家動向などの需給バランスとファンダメンタルズ分析を主としています。
2018 年からフリーランスとなり、午前中は株式投資。午後は FX、仮想通貨を見ながらコンテンツマーケティングを行っています。

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